プロドライバーが冠攣縮性狭心症の診断を受けたら運転業務は可能なのか?仕事内容はどうなるのかを解説します
どうも、ほるべー隊長です。
自分は運行管理者第一種講師(一般・基礎講習講師)であり、冠攣縮性狭心症の持病を抱えている一人です。
※現在、運行管理者指導講師は病気発症により退任しています
※ ※ ※ ※ ※
まず始めに、貨物・旅客業務に携わっておられるプロドライバーの皆様、日々の業務大変お疲れ様です。
こうしたプロドライバーの方々がおられるからこそ、日本の経済が成り立っているという紛れもない事実がありますから頭が下がる思いです。
しかし、
そんなプロドライバーの皆様にとって大敵なのは『心臓などの循環器疾患』。
特に冠攣縮性狭心症の場合、『突然の発作に見舞われる』という症状が特徴ですから、
プロドライバーの方々にとっては非常に恐ろしい病気であり、死活問題です。
もしかしたらこの記事をお読みになっている方もそんな悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか?
そんな方々の為に運行管理者講師としての経験を基にして、
●仕事の内容はどうなってしまうのか?
※あくまでも『冠攣縮性狭心症』についての解説ですので、他の種類の狭心症や心疾患の方には当てはまらない内容もありますのでご注意下さい。
医師からの運転業務可否の意見をもらうことが大前提
まず一番大切なことは、
医師の診察・治療を受けて、運転を含むどの程度までの業務が可能なのかというアドバイス(意見)をもらうことです。
これは大前提です。
この病気の症状の程度は人によって様々です。
例えば・・・
上記のような例もあります。
ただし、あまりこのような事を言いたくはないのですが、
実際にはこの病気になってしまったら、
それまでと全く同じ内容の運転業務を継続できる例は多くないというのが現実です。
ドライバーの方の中には、そうなることを恐れて医師の診察を受けていないという方が多いのではないでしょうか?
健康診断で要精密検査項目があったり、胸痛などの自覚症状があるにも関わらず医師の診察を受けずに業務を継続してしまう・・・
確かにお気持ちは痛いほど分かります。生活がかかっていますし。
自分もこの病気で同じような目に遭っています。
しかし・・・
それが原因で事故につながってしまったら、もっと悲惨な現実が待っているということを忘れないで下さいね。
自分の命や愛する家族、そして他人の命や会社の名誉を守るため、
『それまでと同じ業務ができなくなるかもしれない』
という覚悟は必要だということは認識しておいてください。
最初にも述べましたが、
まずは医師の診断を受け、治療を行っていくことは絶対条件です。
身体的負担が小さい運転業務や時短勤務への変更の可能性が高い
前項でも述べましたが、症状が軽い場合はドライバーとしての業務を継続できることもあります。
ただし勘違いをしないで頂きたいのですが、
『それまでと同様の業務が可能』とは言い難いのです。
特に長距離を担当されていたドライバーの方はある程度の覚悟は必要です。
この病気の特性上、やはり長距離運転は厳しいと言わざるを得ません。
従って、
<長距離トラックドライバー>
↓
地場配送(50〜200キロ圏内)
↓
市内循環バス乗務
というように、
比較的負担が小さい業務への配置転換になる可能性は高いです。
確かに長距離ドライバーは数あるドライバーの中でも別格の存在です。
そんな地位にまで昇りつめたドライバーはいくら病気が原因とはいえ、事故を起こした訳でもないのにその地位から降りるのは悔しい気持ちでいっぱいでしょう。
しかし繰り返しになりますが、健康と安全が第一ということを忘れないで下さいね。
それから長距離ドライバーに限らず、中・近距離ドライバーでも時短勤務になるケースもありますし、ハイタクでは深夜の業務をさせないといった処遇をする会社もあります。
とにかく会社側との相談は不可欠になります。
医師の診断書などを基に相談や交渉を進めていくことになりますが、
やはり冠攣縮性狭心症は突発的に発作が来るという非常に厄介な病気ですから、ある程度の妥協は必要だと考えてくださいね。
他にどのような業務に替わるケースがあるのか
医師の診断などにより、
「運転業務は厳しい、又は減らすように」
と判断された場合、どのような業務への異動・転換が考えられるのか?
この項では、
実際に自分が経営者や運行管理者の方々から教えて頂いた代替業務についてご説明をさせて頂きます。
『運行管理者の補助者』を兼務した業務に当たってもらう
●『運行管理者補助者』兼『運転手』
●『運行管理者補助者』兼『事務』
これ以外にも幾つかの例がありますが、
経営者や運行管理者の方々はこの代替案を提案・指示することが多いです。
『運行管理者』は法令上必ず必要なポジションですし、他の仕事をしながら『補助者』としての業務にも当たってもらうということですね。
『補助者』の資格については、
独立行政法人自動車事故対策機構NASVAや、国交省から認可を受けた自動車教習所で行う『運行管理者基礎講習』を受講すれば資格が与えられます。
※教習所に関しては実施していないところが多いので注意して下さい
このように資格の取得は容易です。
ただ、ドライバー達を管理するポジションですし、
『点呼』など運行管理者の業務を代行できるわけですから『補助者』とはいえ重要な立場ですね。
それから会社によっては『整備管理者』の業務を兼務してもらう事もあるようです。
車両の点検・維持管理ですから、こちらも重要な仕事ですね。
『運行管理者』の業務に当たってもらう
ドライバーとしての経験を活かし、運行管理者として業務に当たってもらうことは経営者にとっても嬉しい事です。
確かに運行管理者の資格はそう簡単に取得できるものではありませんし、合格率は年によって変動しますが約30%と低い数値になっています。
ただ、地道にコツコツと勉強を重ねていけば充分に合格は可能です。
まずは『補助者』として経験を積み、それから試験にチャレンジするという方が多いです。
それから、
試験を受けずに資格を取得できる方法もあります。
※ただし現時点(R2.11)では『貨物の運行管理者資格』のみが該当で『旅客』に関しては軽井沢スキーバス事故発生を受けてこの特例は廃止されています。『貨物』に関しても今後法改正が無いとは言い切れませんから詳しくは自動車事故対策機構の本部、または支所などに直接お問い合わせ下さい↓
この2つの要件を満たしていれば資格が取得可能です。
少し注意して頂きたいのは②で、5回のうち基礎講習を必ず1回は受講する必要があり、しかも5回のカウントは基礎講習を受講した時から始まると定められています。
ですから、基礎講習を受講する以前に一般講習を受講していた場合、残念ながらその受講した一般講習はカウントには含まれないということです。
※ ※ ※ ※ ※
運行管理者は重責を担う役職で大変なポジションではありますが、ドライバー経験者ならばその業務内容もある程度想像出来るでしょうし、ドライバーとして得た経験は大変貴重なものですから運行管理者業務にも役立ちます。
実際に自分が講習をしてきた運行管理者の中には、かつてはドライバーだったが病気を契機に運行管理者へ転身したという方も多くいらっしゃいました。
どうせ年を取れば満足に運転できなくなるのだし、事故する前に事務方になってよかったのかもしれない
という考えの方が多いです。
確かにそういった発想の転換も必要なのでしょうね。
ピンチをチャンスと捉える
プロのドライバーとして活躍されてきた方が、いきなりその道を病気によって塞がれた場合、確かに最初は大きなショックを受けるでしょう。
ですが冠攣縮性狭心症を発症したということは、もともとそのような体質を持っていたという要因もあるわけですから、
事故を起こす前に病気の存在に気付いてよかったと考えるべきです。
それから、
当然ながらプロドライバーは一般のドライバーに比べて高度な運転技術を持っているわけですが、年齢とともにそれが衰えていくことは紛れもない事実です。
いつか運転をやめねばならない時は必ず来ます。
ですから、
「思ったよりも運転をやめる時期が早く来てしまった」というように考えて頂きたいのです。
事務方の仕事に異動になったからといって、
まさか自分が事務の仕事をやるのかよ・・・
などと思わずに、前向きに考えて下さい。
例えば、
『運行管理者』になれば余程のブラック企業でない限り、ほぼ間違いなく昇給します。
月給で平均5万円アップが相場のようです
そういった良いこともあるのです。
そしてこの資格は国家資格で日本国内どこの都道府県でも有効ですから、同業種への転職をする際にも大変有利です。
「ピンチをチャンスに」というポジティブな思考にするのは確かに難しいことではありますが、決して悪い事ばかりではありません。
マイナス思考ばかりに陥ってしまわないようにして下さいね。
おわりに
「冠攣縮性狭心症を抱えてしまったドライバーはどうなるのか?」
ということをテーマに解説しましたが、
やはり健康と安全が第一ですから、診断結果次第では仕事内容の変更を受け入れざるを得ないのが現実です。
それを嫌って、診察を受けないということだけは絶対に無いようにして下さいね。
会社側とも相談をすればいろいろな道が見えてくると思いますよ
プロドライバーの皆様にこんな事を言うのは釈迦に説法だと思いますが、
本当に、事故を起こしてからでは遅いのです。
何もかも失ってしまいます。
トラックやバスのドライバーが運転中に心臓発作に見舞われて交通事故につながったという話はよく耳にされる事案だと思いますが、
そのほとんどが体調の異変に気付いていながら医師の診断を受けていなかったというケースが非常に多いのです。
当然、治療をしていなければ発作を鎮める唯一の特効薬であるニトロもないわけですから、運転中に発作が起きれば安全に運転を継続することは不可能です。
※ ※ ※ ※ ※
最後に、
この病気になったからといって悲観的にならないで下さい。
症状が軽く、医師が大丈夫だと判断して定期的に診察を受けながら治療をしていれば運転業務を継続することも可能です。
「運転するのは厳しい」という医師の判断を受けた場合では、残念ながらそれまでと同じ運転業務は出来なくなる可能性はありますが、ご紹介した通り他の業務もあります。
とにかく、
『医師の診断と治療』
『会社との相談』
この2つを基軸にして、今後のご自身に最適な業務内容を模索して下さい。
大変だとは思いますが、頑張って下さいね!
では今回はこれで失礼致します。