ほるべー隊長のブログ

『AT車』と『AT限定免許』の普及はドライバーの質を低下させたという事実

どうも、交通カウンセラーのほるべー隊長です。

突然ですが、あなたは他のドライバーの運転についてどう思われますか?

優秀なドライバーが多いですか?

・・・

自分は全くそうは思わないどころか、全体的にドライバー達の運転マナーやスキルレベルが一昔前に比べるとかなり低下してしまったと考えています。それは多くの専門家の間では共通の認識です。

なぜか?

理由は様々ですが、自分はその原因の一つにAT車の普及が深く関係していると推測しています。言うなれば、AT車がもたらした弊害といったところでしょうか。

今回はその例をいくつかご紹介しましょう。

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AT車限定のドライバーは停止時の車間距離をあまり意識しない傾向が強い

最近は煽り運転や走行中の車間距離がとても短い危険な運転をするドライバーが問題になっていますが、赤信号などの停止時にもやたらと近づいて停車するドライバーが多いと思いませんか?

「いや、そんなことはないだろう」

なんて思ってしまった人は要注意です。もしかしたら自分が気付いていないだけかもしれませんよ。

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停止時の車間距離が近いということも接触事故につながる危険性がありますし、トラブルに発展するケースが多いことは周知の通りです。

間違いなく最近は停止時の車間距離が近いドライバーが増えました。

と言いますか、

『停止時の車間距離』というものに無頓着であるドライバーが増えたと言い換えたほうが正しいです。

その原因がまさにAT車なのです。

 

なぜAT車のドライバーが無頓着であるのかを説明しますと・・・

AT車はよほどの急な上り坂でない限り、発進時に後ろへ下がってしまうということがありません。ですから、AT車しか知らない人は発進時に後続車と衝突するかもしれないという概念がありません。

しかしMT車の場合は違います。少しでも道路が上り坂になっていれば多少なりとも後ろへ下がってしまうことは日常的に起こります。

しかも上り坂は山道だけではなく、市街地の道路にも多く見られます。特に交差点の手前(停止線付近)などは非常に多く、実は道路の至る所にあるものです。

MT車を運転する場合は発進時に後退する危険性を常に考えておかなければならず、必然的に前車や後車との車間距離を気にします。

坂道発進の教習で苦労した人も多いはずです

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MT車がまだそこそこ走っていた時代では、ドライバー達は発進時は後退するかもしれないという危険性を知っていた為、意識的に前車との距離を多めに取って停車するという習慣がありました。

残念ながらAT車しか運転したことのないドライバーが増えた現在では、そのような意識を持ったドライバーは少なくなったと言わざるを得ません。

AT限定免許が全盛の今日では仕方の無いことなのかもしれませんが、教習所の先生方ももう少しその事に触れて教習を行って頂きたいものです

 

何も考えずに前車にベタ付けで停車するドライバーがいかに増えたことか・・・

そんな無頓着なドライバーははっきり言って危険であり、交通トラブルの原因を作ることにもなります。

停止時の車間距離が近いということは当然ながら追突などの危険が増えますし、前車に対して余計なプレッシャーを与えます。その前車がMT車ならばなおさらイヤな思いをさせるでしょう。

さらに言うと、前車のドライバーが気の短い人ならば車間距離が近いことに激高してトラブルに発展することも多々あるのです。

このように、本来車間距離というものは、走行時だけではなく停止時にも気を配る必要があるのです。

 

今日の日本ではAT車が全体比率の98%を占めるという状態の中、果たして停止時の車間距離をしっかりと意識しているドライバーは何%いるのか・・・

 

余談ですが、

「停止時の車間距離が近いドライバーは走行時の車間距離も近いのではないか?」

という仮説を立てて検証を行った交通学の専門家がおります。しかし残念ながら、今のところその関連性を証明するには至っていないそうです。しかし、経験上自分はその仮説は正しいと考えています。それはまた別の機会で解説することとします。

 

エンジンブレーキを知らないAT車ドライバー

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エンジンブレーキを知らない人がなんと多い事か・・・

 

自分はこれまでいろいろな安全運転講習会や大学での講話、企業などの運転指導などを行ってきましたが、特にAT限定免許の人や、女性、若年層の方はエンジンブレーキの存在すら知らないという人が大勢いるという事実を知りました。

MT免許をお持ちの方であれば、その名前自体は知らなくてもそれが何なのかということを経験や感覚で知っています。

 

エンジンブレーキとは・・

簡単に言うと走行中にアクセルを踏むのをやめた場合、エンジンの抵抗力が発生するためブレーキがかかった状態になること。低いギアに入れればエンジンブレーキはより強く効く。フットブレーキとは別物。

 

このエンジンブレーキは特に山道など下り坂での走行時には必須です。

エンジンブレーキを併用せずにフットブレーキだけを使い過ぎるとどうなるのか?

運転免許をお持ちであれば教習所で習っているはずですから、当然お分かりですよね?

しかし・・・

知らない人が多いのが現実なのです。 

山道の下り坂をずっとブレーキランプを付けっぱなしで走行していたり、明らかにフットブレーキの使用時間が長い人は、まさにエンジンブレーキを知らないドライバー。

Dレンジのままで走行しているのでしょう。

それがいかに危険な事か・・・

フットブレーキの使い過ぎはフェード・ベーパーロックを誘発し、大事故につながってしまいます。

 

他にもエンジンブレーキの話とは少し違いますが、下り坂でカーブ走行中なのに平気でフットブレーキを使っているドライバーも多いです。これも自動車の特性を理解していない証拠で、大変危険です。

カーブ走行中のブレーキは自殺行為なのです。

もしも速度が出ていたり、滑りやすい路面状況ではカーブを曲がりきれなくなる恐れがあります。そういう知識は持ち合わせていないのでしょうか?

残念ながら、こういったドライバーは運転操作レベルそのものが低い人だと言わざるを得ません。

 

結局のところ・・・

エンジンブレーキの話に戻しますと、速度に応じたギアを常に自分で選択しながら走行しなければならないMT車と違い、AT車の運転しか経験のない人にとってはエンジンブレーキを効かせるという概念が薄いか、あるいはそういった知識そのものが無いというケースが多いのです。

 

前述したカーブ走行の特性なども含め、もう少し運転の知識そのものを深めていきましょうよ・・・

いくら「運転は好きじゃないから」とか「興味が無い」といっても、運転は命に関わることなのですから。

『無知は罪』なのです。

自分も安全運転教育に関わってきた一人として、こういった現実を見るたびに自分の力不足を感じると同時に、猛省しています。

 

運転操作をラクチンにしたAT車はマナー崩壊などの大きな問題を生んでしまった

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確かにAT車は運転操作そのものをラクに行うことができ、自動車をより身近なものにしてくれました。その恩恵は計り知れません。

しかし、それによって生じた新たな問題点があります。

それは、誰でも簡単に運転することができるようになってしまった為に『自動車の運転』という一歩間違えば凶器になるものに対するドライバーの認識が相当甘くなってしまったということ。

まさに運転への緊張感が欠如してしまったと言えるでしょう。

加えて日本では90年代後半頃から世界では例を見ない珍現象であるミニバンブームが起こり、

『クルマは自分の家の部屋と同じ』

という感覚や風潮がどんどん強くなっていきました。

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それにより、道路は公共の場所であるということを忘れ、公私の『私』を優先した幼稚なドライバーがたくさん育ってしまったことは紛れも無い事実です。

結果として、

『自動車の運転をより身近で簡単にしたATという画期的な発明品』は、『室内空間が広くて部屋そのものである”ミニバン”』とコラボすることにより、ドライバー達の交通マナーやモラル低下を招いてしまいました。

 

事実、車内の中で子供をチャイルドシートにも座らせずに自由に遊ばせている親がなんと多いことか・・・これでは万が一事故を起こした場合、その衝撃で子供は内側からガラスを突き破り、車外へ放り出されて間違いなく命を落としますよ。

車内は自宅の部屋ではないのですよ!

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得てしてそういったドライバーがする運転の仕方といえば・・・

ウインカーは出すのが遅い、又は出さない

急に、頻繁に、車線変更をする

車間を詰める

当然のごとく交通違反のオンパレード

すぐにキレる

などなど、挙げればキリがありません。

他人のことはお構いなしです。

なぜなら彼らにとって車内はあくまでも自分の家であり、家にいる感覚のまま運転をしているのですから。

まさに日本が独自に発展を遂げた固有の文化です(悪い意味で)。

 

 

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当然、立派に運転されておられるミニバンドライバーの方もたくさんおられます。

ただし、やはりマナーやモラルの低下の一因は、運転を安易なものにしてしまったATという存在と、ミニバンなどが『車内は部屋』という風潮を蔓延させてしまった事もあるという見方は否定できないでしょう。

 

先進技術が普及してもドライバーの質は下がらないで欲しい

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AT車は運転にいろいろな意味で革命をもたらしました。とにかく運転時の負担は減り、誰もが簡単に運転できるようになったという素晴らしい側面はありますし、特に身体に障がいをお持ちの方にとっても自動車をより身近なものしてくれたという功績は非常に大きいです。

しかしこれまで述べてきたとおり、良いことだけではありません。

今回は取り上げませんでしたが、ペダルの踏み間違いによる事故の増加も懸念事項ですね。これはAT車特有の事故形態であり、MT車ではほとんど発生していません。そういったことに関しては先進安全技術などを搭載することによってカバーしていくことが予想されます。確かに悲惨な事故を減らす為には必要な技術であると考えます。

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 これからの交通社会は、よりドライバーの負担を減らすこと、そして交通事故を減らすことに主眼が置かれていくでしょう。

ただ、果たしてそれだけで良いのでしょうか?

いくらそういった自動運転などによる技術革新が高まったとしても、ドライバー自身の『他者をいたわる精神』や『ルールを守る遵法精神』そして『運転をすることの責任感』が置き去りにされていかないでしょうか?

今後様々な先進技術が搭載されたとしても、やはりドライバーはいろいろな意味でもっと運転に対して真剣になるべきです。

今回述べてきた事を引用すると、

なぜ車間距離は大事なのか?

なぜエンジンブレーキは大事なのか?

なぜ交通ルールがあるのか?

なぜマナーは大切なのか?

すべてに理由があるのです。

知らなければ勉強をしなくてはなりませんし、危険なものを操作しているのだという責任感を持たなくてはなりません。

 

そうした素地を持ったドライバーならば先進技術も上手に使いこなせるでしょうし、安全への大きなアドバンテージとなるはずです。

 

 

最後に、

かつてオートマチックトランスミッション(AT)という先進技術がドライバーに恩恵をもたらしてくれました。それと引き換えにドライバーは『運転の知識や責任感』を退化させてしまいました。そして、今度はそれより大きな先進技術の波が押し寄せようとしています。そのときドライバーはどう変容していくのでしょう?さらに荒廃していくのでしょうか?

 

そういう方向にだけは行って欲しくないと願いつつ、今回はこの辺で失礼いたします。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。